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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
元々、地頭の鎖をきらって、散所住民となった彼らだし、官家の余剰物資を市へ出して、それぞれの販路へながす商人たちの商売まで、すべて公卿経済との結びつきの上にある彼らなので、
「鎌倉。鎌倉たアどこだい」
といった風な反骨はどこかにあり、何かといえば、
「おれたちは、宮方だ」
とも、公言して憚らない。
それはいいが、彼らの気負いと結束力では、つい衆の勢い、相当あくどいこともやってのける。平時の荷抜き、喧嘩まぎれの掠奪、放火、暴行、私刑のやりくちなど、やはり不羈の民たることは争えない。――だから、これを呼ぶに、時の人は、
悪党
と、なしていた。
だから、この不毛を食う不毛の民を支配している石川の散所ノ太夫義辰も、時の呼称に従えば、悪党だった。
さらには、おなじような土豪的勢力をこの河内の山野にもっている錦部郷の錦織の判官代、また金剛山のふもと赤坂の水分に住む楠木正成といえ、その意味ではみな、相似たる
悪党の族
にほかならなかった。
いや、世はまさに、悪党時代といえなくもない。――武力と政治をにぎり、或いは、格式と典礼だけをもって、民へ臨んでいる幕府人と朝廷人だけが、ひとり悪党の名称をまぬがれているのも、何だか不合理で、おかしく思われるほどな世相であった。