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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

わしたちを救うてくれたお人たちぞ。早く来て、お礼をいえ、お礼をいえ」

「あ。そうか」

やっと、菊王にも事情の少しが分ったらしい。そこへ走り寄るなり三名の武士たちの足もとへひれ伏した。しかしまだ半分は、依然、無我夢中のような早口だった。

「さては、われらが助かったのは、御加勢のお蔭でございましたか。ああ、何とお礼を申し上げてよいやら」

共に、頼春もくり返して。

「思わぬ御助勢を給わり、あたら犬死をまぬがれました。……失礼ながら、いずれの殿輩におわせられましょうか。せめて、尊名だけでも、お聞かせおき願わしゅう存じますが」

「いやいや、名のるほどな者ではありません」

三名は顔見合せて、微笑をふくむだけだった。そして、

「いずれもこの近くの郷に住む、名もなき田舎武者です。申さば、お身たちの御運がよかったまでのことだ。それよりはどこも、お怪我はなかったか」

中でも年かさの一人が、労りの眼をくばった。

さっきから、その人の姿ばかりを、穴のあくほど見ていた菊王は、とつぜん、

「もしや、あなたは楠木家の御舎弟さまではございませんか。いやそうだ。正季様にちがいない」

と、それまでのためらいを破って、他の人々を驚かせた。