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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
猜疑心は時代の通有性だった。又太郎の方でも特にいやな奴輩だとは考えもしない。
「やっ、もしや?」
とつぜん、馬上の者が、土にぽんと音をさせて降り立ったので、それには主従も、何事かと、怪訝りを持たないわけにゆかなかった。
「おう、間違いはない」と、武士は又太郎の前へひざまずいた。そしてもいちど、松明の下から、しげしげと仰ぎ見て――
「おそれながらあなた様は、下野国足利ノ庄の若殿、又太郎高氏様と見奉りますが」
「なに。わしを又太郎高氏と知ってか」
「知らいでどう仕りましょう。多年、足利表のお厩にも召使われておりましたれば」
「では、篠村に来ておるわが家の郎党よな」
「はっ。御一族の松永殿に従って、足利ノ庄よりこの丹波篠村の御領所へ移ってまいった一名にござりまする。……がしかし、若殿には、いかなるわけで、かかる遠くまで」
「さてはそうか。じつはその篠村の領所を訪ねんと、これまで参った途中よ。篠村まで、あと道のりはどれほどか」
「なんの御案内仕りまする。汚い鞍ではございますが、どうぞ、それがしの駒の背へ」
「が、そちは」
「京へ罷る途中でございましたが、それどころかは。これより篠村へ引っ返しまする。