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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

帝獄

なんとか、御一考なくば、いつまで、人心の不安もおさまるまいと存じまする」

――こんな情況も聞いたりして、道誉は深更に、佐女牛の宿所へ駒を返していた。

なるほど、都の深夜は、鬼気せまるものがある。所々の辻篝などは、むしろ地獄の火を連想させて、ために、そのほかの闇が一そう濃い。

「……高時公へは、こう書いて。……新朝廷の補佐たちは、誰と誰とに、こう呼びかけて」

帰路を悠々とやる馬上の道誉の胸は、もうその方寸をえがく夢でうつつなかった。彼は闇を忘れている。また彼は地獄を感じていない。彼の生の意味と欲望は、婆娑羅な道にあるだけだ。この世は、欲望の園であり、じぶんは花に飽かない虻の大王だと思っている。

帝獄

鎌倉の前執権、相模入道高時は、あの小児病とも瘋癲ともつかない物狂いで、職はすでに退いていたはずであるが、いぜん近ごろでは、その軍令政令のすべてが、彼の裁可に発しられているふうだった。

道誉が、その高時からの返辞をうるまでには、往復ほぼ半月もかかったので、もう十二月に入っていた。

下状には、

「願いはゆるす」

とあった。

なお、ただし書きには、

「公には、むずかしい儀だが、先帝以下、一味の皇子公卿ばらの御処分も、明春早々には、勅裁を仰ぐにいたろう。