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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
小右京がとつぜん身をうち伏せて、嗚咽の黒髪によよと波打たせていたからだった。
良人に別れただけでなく、世人すべてから冷眼視されている美しいこの公卿後家が、いかに生きづらいかなど、訊かなくても彼にも分る。
また、あまり聞きたくはない。自分の立場は、彼女の良人と真反対な戦勝国の一将だ。心の底など割るわけにもゆくまい。……どれ、俊基の形見をわたして、非情には似るが一刻も早く立ち帰らせるとしようか。――高氏はそれを取りに立ちかけた。
すると、小右京もふと共に濡れた顔をあげた。あわれなと高氏は見た。それが彼女のことばを誘う眸になったかもしれない。縋るような声が唇ばたの涙もそのままほとばしり出た。
「高氏さま。どうしたらよいでしょうか。女は、このような世を」
高氏は、はたと、その腰とまた当惑顔とを下へ落した。
「……お察しする」
「仰っしゃるような辛さには耐えても、世間は世の隅にもおいてはくれませぬ。恐ろしいお人が、つねにこの身を追ッて、捕えずにはおかぬと、狙け廻しておりまする」
「検断所の役人どもでも」
「い、いいえ。名だたる鎌倉がたの大将です」
「えっ、名だたる者で。