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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

それというのも、夜来、六波羅の総力が叡山のうごきにつり込まれて、大津や白川口などに、全神経をそそいでいたためだった。――で、山門の二皇子の出で迎えも、結果的には、全然無意味でもなかったのである。

とはいえ、その朝、内裏へ踏みこんだ武者輩の狼藉は、腹いせまぎれもあるが、ひどいものだった。

「通せ」

「通さぬ」

で、外門を守護していた滝口の衛士とのあいだに、一ト争い起ったが、彼らの甲冑の前には、ひとたまりもない。数名は討死し、あとはどっと逃げ争う。

生け捕られて、高手小手にいましめられた滝口もある。呶号の中に蹴とばされて、

「みかどは、どうした?」

「皇后はどこへ隠した?」

さんざんに責められたが、もとより彼らも、寝耳に水で、おん行き先など知ろうよしもなく、ただ、ゆうべ、いぶかしい一輛の女房車に、上達部などが車副して出門された、という一事だけを、くり返すばかりだった。

「さてこそ」

「何か、証でも」

土足の武者たちは、局々の調度を荒らし、御簾を引き落し、お座所の御手筥から帳までひッくり返して、家探しに興がッた。

えならぬ香気や、女性のいたらしい部屋温みまでするのだが、さて、女童ひとり見当らない。