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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

千葉ノ介貞胤と、小山秀朝の二将は、今朝もまた、出立まぎわの喧騒に手をやいて、

「かかる有様では、やがて山間の旅へ入ると、いよいよ困ろう」

と、嘆じていた。

ところへ、何か道誉の打合せが来て、二将は、彼の待つ神社の横の幄舎へかくれた。そして出発を目前にしながら、道誉を中心に、鳩首、時を移しているふうだった。

とは知らず、

「まだか、出発の命は」

「今朝にかぎって遅いのは、どうしたわけ?」

馬を揃え、列を作って、兵はしびれを切らしている。

すでに、帝も輿にお身をまかされ、三人の女房らも各※(二の字点、1-2-22)輿の内だった。――何か、火急な機密でも諜し合わされていたものか。

さて、やがてのことである、やっと。

「立てっ。列を出せ」

千葉と小山の号令は伝えられたが、いつもよりよほど遅い発向となっていた。

道誉の騎馬もすぐ列前に現われて、帝のお乗物の側へ付く。

ご不予(病気)は、帝の口実とわかっていたが、しかし、終日の輿のお旅は、いかにお辛いか、誰にも、それのお察しはつく。

なにしろこの同勢と、輿のお旅では、一日五里がせいぜいである。六里をこえることは難しい。