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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
そもそも、天皇は宮苑から一歩も自由には出られぬ籠の鳥とみていたのが大誤算だった。――いかに後醍醐の豪気といえ、暗夜、皇都脱出の挙に出ようなどとは、夢想もしていなかったことだから、その狼狽ぶりたるや、絵にも描けない。
するとまた、ちょうど、そんな緊急事やら、早馬立てに、ごッた返していた中である。叡山の一法師が、駆け込み訴えをして来た。その坊主の告げるところを聞けば、こうだった。
「――天皇のお行方は叡山でおざる。二十四日の夜どおし、鞍馬の間道をさまよわれ、二十五日の朝がた、北嶺より入山あって、釈迦堂を行在所にあてられ、即刻、みことのりを発せられたうえ、坊舎の上に高々と、錦の御旗をお掲げでおざった」
おおかた、それとは察していたところだが、この訴人をえて、六波羅方は、
「やはり、そうか」
と、ふるい立ち、
「いまは一刻も猶予すな」
とばかり、即刻、全兵力を叡山攻めにかたむけた。
しかし、鎌倉へ飛ばした早馬は、いかに早くても三、四日はかかる。さらに鎌倉本軍が到着するには、なお十余日は見なければならない。まさに、すべては六波羅の後手だった。
その上にも、六波羅はまたぞろ大きな誤認の下に戦端を切った。