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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

「ごらんあれ、物始めよし。――岡本坊ノ律者快実、武家の大将一人打ち取ッたり」

と、み幕の内へすすみ、穂先の首を抜いて、実検に供えた。

首は、敵の副将、海東左近将監なりと、彼は披露し、そしてその将監との戦いぶりを、さも得意げに、申したてた。

「あっぱれ、よくやった」

大塔ノ宮は、賞辞されたが、弟宮の宗良は、よく正視もなされぬのみか、お顔のいろすら、青白うなられた。

「後刻、さらに二の首を、御見に供えたてまつらん」

と、阿修羅はまたすぐ、麓へ向って駈けて行った。

戦況は刻々、お味方有利と、聞えてくる。大塔ノ宮は、じっとしておられぬように、

「実戦のさまも見ないでは、将として不覚、かつは、みかどへおはなしも出来ぬ」

と、三ノ宮林まで陣座をすすめ、麾下の法師旗本へ、

「敵は退き色、もう一ト押しぞ。ひとり岡本坊のみに、手柄を誇らせておくな。われと思わん者は行け」

と、みずから指揮された。

おおっとばかり、桂林坊の悪讃岐、中の坊ノ小相模、侍従の定快、伯耆ノ直源など、各※(二の字点、1-2-22)堂衆四、五十をひきつれ、戦いの中へ割って入った。

でなくてさえ、山門勢の鋭鋒に押しまくられていた六波羅方は、唐崎の陣をすてて、みぎたなく潰乱しだした。