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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
いつか、彼はとろと眠っていたらしい。――はっと眼がさめたのは、どこかを行く馬蹄の音に驚かされていたのだった。
「や。明けかけている」
簗小屋を這い出すなり高徳は息をつめて畷の方を凝視した。津山川の水面もまだわかたぬほどな霞だし、空は白みかけたばかりだった。
けれど輦輿の護送の列は、もう院ノ庄を出て来たらしい。
まもなく、それは近くの堤へ蜿蜒とさしかかって来た。いくつかの輿、そのあとさきをつつんで行く騎馬の数十騎、道誉、千葉ノ介、小山秀朝。――高徳は草のなかに匍ってかぞえていた。そして兵の一人一人からさいごの列が過ぎるまでは、身じろぎもせずにいたが、ついに大覚ノ宮を見いだすことはできなかった。
「おられぬわ」
不安とすべきか、安心とみていいか、彼はいずれとも解き迷った。捕われてはいないとも解せる。或いは、捕われてなお倉院に置かれたかとも考えられる。
高徳は惑いに駆られながらいつか倉院の広場へ来てあちこちしていた。重たげな花の露の下はまだほの暗く、いまは人ッ子ひとりの影もない。またなんらその人の安否とてもわからない。
が、ふと彼は、大きな一樹の前に佇んだ。