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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

となったものである。

「逸まるな、まず問うてみろ」

正季が言ったとき、彼方の隊からも一人出て来た。

味方とはそれですぐ知れた。

彼らは、奥大和に散在している宮方の郷士たちの由で、

「楠木殿の御陣に加わるため、馳せつけてまいる者」

と、それぞれ名のる。

このほか、同夜をさかいに、各地から四天王寺へ急いだ兵は、なお大小幾十組となくあった。

まだ「大坂」という地名はなく「難波」とよび、また、「小坂」といっていたその頃から、四天王寺は堂塔四十幾ツの輪奐を聚せた大曼陀羅の丘だったが、ここの「秋ノ坊」までは立ち入る人も稀れだった。

秋ノ坊は、食堂から北の方にある一建物で、

四天王寺公文所

とも呼び、大昔の小野妹子いらい、世襲になっているという寺司職の私邸が、木の間隠れに、しずかだった。

「……では、これで」

正成は今、そこの奥を辞して、外へ出て来た。

そして送って来た後ろの者へ、重ねて、

「もう、おひきとりを」

と恐縮して、立ちどまった。

別当職の一人であろう。彼はそこでも、正成にむかって、厚い礼をくり返し、

「ご戦勝を祈っておりまする」

と、心から言った。

「ありがとう存じます。