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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

ぜひもない。見るまにばたばた、仆れてゆく。

あとはわっと逃げ崩れる。

隅田勢は一気に追う。敵のかばねを踏みこえ踏み越え、すでに全軍は、大江の南を、水から揚ッた水馬隊と共に、遠く敵を追っかけ出した。

ところが、そのあとの渡辺橋の上では、死んだはずの楠木兵が、あらかたムクムク起き出していた。そして手当り次第、そこらの橋板を剥ぎ取っては、河の中へ、ざんぶざんぶ、投げ込みはじめた。

作戦は図に中った。

隅田、高橋らの視角と心理の錯覚が、すべて正成の構想によるものだったのはいうまでもない。

だがなお、敵を思う地点へおびき込むまでは、正成の本隊以下、辛抱づよく、天王寺附近に旗を伏せていたのである。

「これはおかしい」

逃げる楠木勢を追いまくして来た藤内左衛門は、阿倍野の辺で、やっと気づいた。

脆すぎる?

「おおいっ、三河。ちと深入りだぞ。この上どこへ」

折ふし、南へ駈け飛ばしてゆく高橋三河守を見かけて呼ぶと、高橋は彼方で、

「隅田か。あれ見よ」

と、指さした。

「住吉に敵の旗が見える。畢竟、正成のいる陣所か。御辺もこっちへ懸れ。ひっくるんで正成を討ち、一族もろとも、六条河原に首を並べてくれようぞ」