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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
こう彼は諭したが、諸将の沈黙には、なお釈然としきれぬものが拭いきれない。
じたい武者魂とは、お互いの張りと士気で昂め合っているものだ。なかんずく主将の言は、その士気を左右する。だのに、正成が鬱陶しそうな片眼をすこし細めながら、始終、抑揚のない低声で弱音にも似るようななだめを言っているのを聞くと、どうもせっかくな意気も沈んでしまう。幕僚たちには気にくわない。
「では?」
と、正季が何とつかず言い出した。みなの気を腐らせてはと、惧れたのだろう。
「どうなされますか、当面の敵勢は」
「ほっておけ。ここまでは襲せて来まい」
「夜襲という手もありますが」
「夜には、われらが、もうここにはおらぬ」
「では、どこへ」
「遠くへ退こう。退いての上の考えでよい。そして退く前に、士卒のものすべてを、六時堂の広前に、よび集めておけ。ちと披露しておくこともあれば」
ぜひなく、やがて正季やら諸将のあらましも立ち去った。すべての姿が、ここの陣払いとは? と意外な足つきだった。
しずかな退陣準備が行われ出していた。夕日ノ岡やその他の拠点へも伝令が駈けた。しかし仕事は、輜重の荷駄隊がおもである。