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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

朝廷では、この人を、鎌倉の司権にすえておくことが、なんにつけても、都合がよかった。高時だと、諸事、言いなりになるからである。

また幕府内でも、高時を外せば、その執権の職には、一族みな虎視眈々で、たちまち、内紛のおそれがあり、そのもつれは、今日までたびたび、くりかえしてきたのであった。

で。たとえ、かざり物でも暗君でも、この君を立てておくしかないとされて来たのである。

要するに四囲のためだ。

政略、勢力争い、すべて四囲の人間が、自分らの保身と、相手の擡頭をふせぐため“うつつなき人”高時は道具にされていたようなものでしかない。――しかもその人は、生れながらの病弱で、長じてからも瘋癲の持病があり、周囲はそれも知りぬいていた。そして暗君、風狂、奢侈、安逸、あらゆる悪政家の汚名はいま高時の名にかぶせられて来たが、高時にいわせれば、じぶんの知ったことではあるまい。

だが決して、そうとはいわず、また考えるでもなく、我には当然な天職と思いこんで、その執権の座に、衆臣の畏伏や美言をそのまま信じている高時が、金沢ノ老大夫には一そうあわれでならなかったのだ。

「太守。