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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

「やあ新田か。よう上洛ってみえたの」

その人は、風とおしのよい一殿のすだれを捲かせて、時めく公卿らしく、大容に坐っていた。川をへだてた東山一帯の翠巒が廂にせまるほどだった。――座にはさきに来ていた客がいて、

「ほ」

義貞と顔を見合わせ、

「……これは」

と、たがいに奇遇の戸まどいを、ちょっと笑顔のうちに溶かしあった。

忠顕は一人の方へ訊ねた。

「新田とは、相識なのか」

「はい。鎌倉では、いくたびとなく、よそながら」

「はははは。よそながらの程度なら、今を初対面とするがよい。これからはいずれも、朝家の臣義貞であり、朝家の臣、道誉だからの」

と忠顕は、先客の佐々木道誉が返した杯を、すぐほして、義貞の手へ廻した。

「これは」

と、受けた杯も下に、

「今日入洛の新田義貞にござりまする。朝廷むきの御儀にはいっこう不案内な武辺者。よろしく諸事共におさしずを」

と、彼はまず忠顕を拝して着京のあいさつを先にした。

忠顕は、らいらくに。

「いや心得申した。きのうも筑紫から少弐、大友、菊池、松浦などの党が上洛いたし、それらの武士の参内に、あわただしく暮れたばかり……。あすはお辺をともなって、親しゅう闕下に拝謁の儀をとげさせましょう」