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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
「酒代か」
「へい」
「正直なやつではある。剰銭はいらんよ。酌の小女にくれてやったのだ。取っておけ」
「おふざけなすっては困りますよ」
「まだ言ってやがる。よく見ろ。うぬが手に持っているそれが金だ」
「これは……だんな、どう見たって、銭ではございませんぜ、ただの紙キレで」
「知らんな、きさまはまだ」
「たれだって、こんな物ア」
「こんな物とはなんだ、こんな物とは。これっ。かりそめにもこれは、朝廷の御名を以て、あらたに御発行なされた“楮幣”と申す貨幣なのだぞ。……“銭五百文也、記録所ノ頭人、造楮幣使、中御門ノ宰相宣明”と、お花判まで刷ってあるのが読めないか」
「…………」
「ははあ、文盲とみえるな。読んで聞かせる。その裏面を返してみい。――楮幣ハ銅幣『乾坤通宝』ト同ジク併セ用ヒ、一切ノ交易ニ滞リアル莫レ――としてあるのだ。よくおぼえておけ。すなわちこれは、ことし建武元年正月から、ひろく朝廷から発せられた楮幣と申す銭なのだ」
「で、でも」
「まだ申すか」
「ちょへいか、ちょろまかしか知りませんが、こんな紙きれでは、市の仲間が受けとってくれません」
「だまれ。そんなはずはない」
「ないッたって、世間で通用しないものは、どうしようもありませんや。