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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
と往来の目は振向いて行った。去年、硫黄島から帰されてきた文観僧正の供人の列なども、しばしば門を出入りしていた。
すべてみな、時めく宮将軍の威勢が、背光となっていたのはいうまでもなく、その背光を負って、近ごろ彼の門では、
一能一芸の士を招く
と称し、公然と、強弓をひく猛者や、太刀使いの達者を、ひろく世間から募っていた。ましてしかるべき武歴でもあれば、どしどし召抱えて、邸内の侍長屋や兵舎に入れ、私兵として、唸るほど飼っていたのだった。
「おい、町にはまだ、怪しからんやつがおるぞ」
そこの兵舎門からいま居酒屋のおやじの襟がみを引きずッて入って来た三人の侍も、おそらくここの私兵仲間か。その組頭でもあったのか。――広場までくると突き放して、
「いためてやれ。くせになる。御新政のためにもならん」
と、あたりへ言った。
奇妙な世界といっていい。兵舎にはちがいないが、長屋によっては、赤子のオムツや女の腰巻めいた物が干してあり、べつな囲いでは、博奕にうつつを抜かしている車座の群れがある。かと思えば、的場へ出て、片肌ぬぎで、弓の射競べに、汗をぬらしている連中を、むしろの上で、酒をのみながら見物している――もちろんそれも、武技の励みではなく、賭け弓だった。