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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

今・道鏡

今・道鏡

「そうか。あれはもう夜明け近かったのか。……なにせい、えらいやつに舞い込まれ、とんだ訴えを聞いたものだ」

道誉は今朝笑っていた。

佐女牛の邸である。彼の思いだしていたものは、命松丸の姿だったにちがいない。

「主膳。そして、あの小僧は今朝どうしておるな」

「朝餉をくれ、ひとまず双ヶ岡へ帰れと申して追いやりました」

「双ヶ岡の法師の許へ帰っていったか。さすればその兼好も、あとからやって来るかもしれんな。いやあの気まぐれだ、見えぬかもしれん。政治向きには一こうつんぼを装うている曲法師よ」

しかし道誉はゆうべ、命松丸の訴えをかなり熱心に聞いてはやった。そして「安心せい」ともよろこばせてある。

そのための他出だろうか。まもなく彼は供揃いを命じ出した。一ト目で佐々木家とわかる道誉好みの“山吹いろ一色”の行列は、やがて華奢な粧いをこらした主を螺鈿鞍の馬上にみせて佐女牛から練って行った。

すると大路の一つの辻で、ふいに供頭の侍が、

「やい、こっちが先だわ、待て待て」

と、何か大わめきに猛りだしていた。見ると、べつな一列が横から出て来て、道誉の列の先頭と交叉しかけ、どっちも道をゆずろうとせず、威嚇のし競べになったものらしい。