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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
拳に気合いがのッてくると、妓たちはすぐ夢中になった。三人抜くと楮幣が十枚、五人抜くと、二十枚。文庫の楮幣もあらまし懸賞に出て行って、どの妓の膝にも、それが紙屑みたいにくしゃくしゃに持たれていた。
「よし、こんどは」
道誉と忠顕が乗り出して、挑みかかると、彼女らは一せいに、
「だめ、だめ」
と、排斥しあった。
「あなたがたは記録所の恩賞方よ。恩賞方が出ちゃいけないわ」
「どうして」
「負けたらどうなさるの」
「負けはせん」
「きまってるわよ、勝てないに。もう楮幣はおしまいでしょ。ないんでしょ」
「こいつめ」
道誉はさらに、千鳥棚のべつな函から新しい楮幣を出して、膝の前に山と積み、
「さあ、来い」
それを見ると、どっと嬌笑の陣を片寄せて、中のひとりがすぐ出て応じた。
「サ。いらっしゃい」
もちろん、彼女らには勝てもしないし、道誉も忠顕も、勝つ気ではない。ただ楮幣を紙吹雪とすればよいのであった。
その拳にも飽き、また馬鹿騒ぎの歓もつきると、やがて水亭の夜は、おひらきとなっていた。そして妓たちは、さらに楮幣のお祝儀を、それぞれ多分にもらって引き揚げて行った。
「こんなもの?」