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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
――それがなぜ、みなここへきて、事俄かに、打首となったのか。不気味な風は、ここにもあった。
新政府が立ち、すべて「北条九代」の社会は一拭されたようでも、広汎な土壌に潜む旧幕人たちの生命綱は、まだどこかで息をしているにちがいない。殺しても殺しても、殺しきれるものではなかった。
はやくも、この冬から、ことしに入って、
前代の遺臣
と、となえる北条残党の徒が、東北では、出羽や磐城地方に叛乱しだし、九州でも、筑前から薩摩方面で、あなどりがたい猛威をふるい、畿内の近くでさえ、紀伊の飯盛山に叛徒がこもって「世を前代に回せ」と騒ぎだしている。
考えてみると。
亡き執権高時の弟、北条左近大夫泰家は、まだどこかに生きているはずであるし、高時の子のうち、一人は殺されたが、次子の亀寿丸(後の時行)は、炎の下から遺臣の背に負われて信濃方面へ落ちのびたきり、以後の消息はわかっていない。
「これは捨ておけん」
中央では、俄に、それへの戒心がつよまっていた。
そこで、たちまち一決を見たのが、かねがね、阿弥陀ヶ峰の囲いに入れておいた降将たちの処分だった。阿曾、大仏、長崎、佐介など、北条遺臣中でも歴々な輩を、いつまで未処分にしておくのはよろしくない。