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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

「すわまた、二度の世直しか」

と、一触即発の戦気を感じとって、みな、きもを冷やしたものだった。

たれいうとなく、前夜六日の夜半ごろから、

「まもなく五条、二条へかけ、ここら町中までも、合戦の巷になろうぞ」

と、声から声へ、騒がれだしていたのである。

といって、深夜の世間は、日頃以上、しいんと、ひそまりかえっており、犬の子の影も宵から絶えていた。それがなお、いぶかしいという者もあったりして、

「逃げようか」

「いやもう間に合わぬ」

「へたに外へ出たら、かえって危ない」

と、人心地もない都の万戸は、六月の夜を、いちばい、不安に蒸されながら、音なき音に、夜すがら、きき耳を疲らせていた。

ところで。こうした噂のおこりはといえば、火元は、色街からだった。

前夜の宵のくち。――六条の遊女宿で気焔をあげていた一座の武士たちが、意味ありげに、遊女たちへ、

「おれどもが帰っても、今夜は寝ずにいたがいい。やがておもしろい物を目に見せてやる」

と、いつになくみな、早目に引きあげて行ったという。

おなじような例が、おなじ宵、堀川の妓家でもあった。昼ごろから出たり入ったりしていた一座の客は、公卿を交じえた相当な侍たちで、初めは妓たちも遠ざけていたが、宵になると一酌の宴をひらき、そしてしきりに、