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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

これは血の不思議をおもう公卿輩などには、なにか因縁事のようなオゾ毛を慄わせたのではなかったろうか。

いいかえれば、皇室もただの大きな家庭にすぎない。

ただ周囲はだいぶ違う。

異母弟、異母兄、たくさんな妃、それにともなう栄冠や不遇。わけて天皇の世つぎとなると、これはもう家庭などといえる問題ではない。古来しばしば国乱をさえ呼んでいる。

理知にとむ廉子でさえも、それには聡明も失った。いらい大塔ノ宮をみる目に、一ばい女の異常を研ぎすます。――すると事ごとに、周囲の言も、いとこの公知が知らせてきたことも、

「うそではない」

と、思われ出し、

「もし、先を打たれて、宮のたくみに乗ぜられたら?」

と、もう一日もすておけない不安にかられだしていた。

昼の御座であった。彼女は人なき折をみてついに胸の火ぶたを切った。その顔いろには後醍醐もハッとされたふうである。まったく、いつもとちがう廉子の黛であったからだ。

「なに。身をひきたいと」

「はい」

「なんでそんなことを俄に」

「わらわだけでなく、このさい東宮(皇太子恒良)にもご退位をねがって、この母共々、争いの外へ身を避けることが世のためとおもわれますから」