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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
失敗はしたが、六月七日事件は、南禅寺の参禅の直後におこしたものだった。
「良忠(殿ノ法印)。もどったぞ」
「お。お帰りなされませ」
宮は、神泉苑の御所に入るとすぐ訊ねた。
「して。尊氏めが、兵でも集めているというのか」
宮も、随身たちも、それからの小半日は、急遽、狩猟の出先からもどった野駈けの姿のままだった。
解くまも惜しんで、
「すぐ門をかためよ」
と常備の兵を配置につけ、新規召抱えの浪人軍へも、動員をくだしたうえ、なお、
「千種(忠顕)を呼べ。義貞(新田)にも使いを出せ」
と、おもなる味方へ、非常の使者を飛ばすなど、ものものしい手くばりだった。
そのあいだに、宮は、
「良忠――」と、殿ノ法印へむかって。「そちが会った密訴の者は、どこにおいてあるのだ。ここか、六角か」
「されば。訴人は六角のてまえのやしきへ駈けこんでまいりましたものゆえ、六角へとめおいてござりまするが」
「連れて来い。そちを疑うのではないが、念のためだ。おれみずから、しらべてみる」
「宮ご自身?」
「かまわん」
やがて訴人の一武士が宮御所へ移されてきたのはもう夕がただった。暗い冬ざれの庭に大かがりがドカドカ焚かれ、宮は、寒烈もいとわず床几へかかる。