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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
むりはなかった。世は晨に夕べも分らない乱脈さだった。どこのたれがいつ仮面をぬぎ、またいつ寝返るやらも計りしれない。勝敗も一朝には信じられず、人間同士もすべて狐たぬきの化かしあいだ。でなければ餓狼の噛み合いである、――と彼は、自分自体のものから推して現世を見ていた。疑いぶかいのもそのせいであり、人いちばい貪欲なくせに、一面消極的なのも、そのせいであった。
ところが時運の迅さは、はるかに、彼の予想を超えていた。
ほどなく彼も知った。
飛報は、東国の空からだった。
この五月八日。
上野国の新田義貞が、郷土生品明神の社前で、旗上げを宣言していた。
すぐ十一日、十二日と。
新田軍は早や鎌倉への急進をみせ、鎌倉勢はこれを武蔵野にむかえ撃ッて、いまや東国の天地も両軍の激戦場と化しつつある。――くわしいことはまだ後報によらねば分明しないが――と、ここへも聞えてきたのであった。
道誉はおどろいた。過ぐる日、高氏が洩らした言を、いまさらのように思い出していたのである。六波羅の陥落と遠い東国の蜂起とが、日まで、符節を合わしたごとくおこなわれたその遠謀のたしかさに、
「はて! 足利という奴は」