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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

「あのあたり、阿弥陀ヶ峰まで、いやもう難民の群れでたいへんでございまする。見るもお気のどく。さっそくこれへお連れしてはと存じますが、いかがなものでございましょう」

「待て。ここはまだまだ母子を置けるような所ではない。そうだ、そちの手に預けておく。羅刹谷の元の家へ入れて、よう面倒を見てやるがいい。それに近傍は大和口の要所、兵も付けて」

「かしこまりました。時に……もひとつお伺いを」

「まだ用か」

「小右京どのの安否についてでございますが」

「む、後家の君か」

「兵を見せにやりましたところ、仁和寺長屋なども、みな逃げて、住人は人ッこ一人おらぬそうでございます。あの小右京どのも、ひとり殿をたよりとしておられました。捜させましょうか」

「まあ措こう。そこまでは手がまわらぬわい」

高氏は彼をおいて、もうほかへ歩いていた。見廻りの途中だったのである。南北両六波羅の広い地域だ。一回の巡視もなかなかそれは容易でなかった。

「殿」

またも彼の姿をみて、用を持ってきた者がある。師直の弟、高ノ師泰だった。

「例の……兵学者なりと自称する奇怪な老爺のことですが、あの者の処分は、いかがしたものでございましょうな」