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こどうひゃくわ

胡堂百話

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《胡堂百話(こどうひゃくわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 124,386 字 · 248 頁

青空文庫

江戸ッ子

世話ずきの伊庭孝君が、その音楽会の招待券を持って上司氏のところへ行き、

「よろしく後援してあげて下さい。昔の戸山英二郎が、生まれ変ってスタートしたのだから」

といった。すると上司氏は、その招待券を押し戻して、

「藤原義江のことは新聞で読んだ。音楽会には必ず行くが、キップは僕が買ってはいる。招待券で行ったのでは、後援したことにならないから」

と、いったというのだ。この話を私は、伊庭孝君から、じかにきいた。

上司小剣氏について、私が特に書きたいのは、こういった、つつましい人柄についてである。

江戸ッ子

渡辺芳助……といったって、そんな男を誰も覚えていやあしない。寄席がすきで、芝居がすきで、娘義太夫のドウスル連で、むろん遊びも大好きで、そこらあたりに一ぱいいた道楽息子の一人にすぎない。こんなのと友達になったところで、三文の得もありはしないが、今になって思うと、どうやら、私の恩人だったにちがいない。

私が東京に出てきたばかりで、飯田町の下宿にいる頃だった。一目で東京そだちと知れる青年が、私の部屋へ、

「ごめんなすって……」

と、はいって来た。

押売りでもなし、借金取りでもなし、一体なんの用事だろうと、納得のゆかない顔をしていると、相手は遠慮なくドカリとすわって、