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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁
「お前さんの顔に書いてある」
「えッ」
お霜の驚きは大袈裟でした。
「まア、そんな事はどうでもいい、――坊っちゃんの見えなくなった、後前の事を詳しく聴こうじゃありませんか」
平次の調子には、いろいろの意味が籠っていそうです。
「こうなんですよ、親分さん、――昨夜戌刻(八時)少し過ぎでした。あんまり暑いんで、お春さんが坊っちゃんを表の縁台で遊ばせていると、昼買った花火が箪笥の上にあったはずだから、持って来いとおっしゃるんだそうです。店には多勢人が居るし、まだ往来もある頃だから、何の気なしにお家へ入って、花火を捜して持って出ると、ツイ今しがたまで遊んでいた、坊っちゃんの姿が見えないんです」
「手間は取らなかったろうな、お春さん」
平次は乳母の饒舌を少し持て余したように、側で黙って俯向いているお春を顧みました。
「いえ、ほんの煙草なら三服吸う間でした」
お春は、多い毛を重そうに、こう顔をふり仰ぎました。申分なく美しい器量ですが、何となく弱々しいうちに、肉体とは没交渉に強い魂を持っていそうな娘です。
「そんなちょっとの間に、どこへもいらっしゃるはずはございません。それから大騒動をして、町中を捜しましたが、どこにも見当らず、奉公人や、御近所の衆や、お出入りの人達が八方に手をわけて、一と晩寝ずに捜しても悉皆行方が解らないんです