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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁

青空文庫

平次が言うまでもありません。好奇心でハチ切れそうになっているお立会いの衆は、路地を入って三軒目がそれで、母親と二人で住んでいるお倉が、あれほどの縹緻を持ちながら、茶屋女にも町芸妓にもならず、進んで、両国の見世物小屋へ、ここから通っているのだと教えてくれました。

「身扮から、身体の様子、鑿胝の具合を見ると、居職の――それもたぶん彫物師というところだろう――見知り人があるはずだ、その辺で当ってみな」

「ヘエ――」

八五郎は一とわたりお立会いの衆を眺めましたが、馴れた眼で見当を付けると、何となく落着き兼ねた中老人を捕まえて、

「お前さんは知っていなさるだろう、掛り合いなんかにはしない、殺された男の身許だけでも教えてくれ」

単刀直入に訊いてみました。

「本当に掛り合いになりませんか」

「それはもう」

この頃の人が、どんなに事件に掛り合いになるのを恐れたか、今の人には想像もつかない心理があったのです。

「仏師の勘兵衛さんですよ」

「エッ」

「二代目一刀斎勘兵衛、――若いが名人と言われた人です」

「そりゃ大変だ」

銭形の平次が乗り出した時は、中老人は早くも人混みの中に姿を隠してしまった時でした。