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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁
「そんなに遠くまで行くには及ばない」
平次はこんな調子で、とうとう尻の重い太兵衛をおびき出したのです。
池の端仲町の江島屋の門口に立った三人は、
「さあ行こう、俺は佐野屋の代りに一番先だ、八は馬だ、一番後は一昨日の通り番頭さん――」
一歩踏み出しました。加藤織之助様屋敷の角を御数寄屋町へ――。
「どんな事でも言わなきゃなりませんか」
「どんな事でも、石っころに躓いたことでも、犬に吠えられた事でも」
平次はうなずいて見せます。
「この横町から出て来て、私に道を訊いた人がありましたよ」
いくらも歩かないうちに、――御数寄屋町と同朋町の間の、狭い横町を太兵衛は指します。
「どんな人間だ」
「浪人風の男で、――顔は忘れましたが、額に古傷のあったことだけ覚えています。元黒門町の上総屋へ用事があるが、どこをどう行けばいいか――と丁寧に訊くから、小戻りして教えて上げましたよ。上総屋はここから見えませんが、少し戻ると、それ、よく見えるでしょう」
太兵衛は小戻りして元黒門町の方を指さします。
「その間に馬は?」
「佐野屋さんの後ろから、門奈伝十郎様の御屋敷前を、天神下へ曲りました」