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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁
太兵衛は口惜しそうです。子飼いの番頭らしい一刻さで、何べん大黒屋へ呶鳴り込もうとしたことでしょう。
「馬はどこのだい」
「町内の十一屋に頼みました。駕籠や釣台じゃ面白くないから、古風に飾り馬にしようという話で――」
これ以上は何を訊ねても判りません。平次はガラッ八を促し立てて、そこから一町とも離れない、仲通りの飛脚屋に立寄りました。
「銭形の親分さん、――江島屋の三千両のお話でしょう、手前どももあの騒ぎにゃ、とんだ迷惑をしていますよ」
十一屋の親方は、平次の顔を見るとこぼし始めました。
「馬はどこにいるんだい」
「お目にかけましょう、裏の厩ですが」
案内してくれたのは、裏の大きな厩、五六頭の馬の中に交じって、一きわ美しい、鹿毛を親方は指します。
「こいつはいい馬だ、――こんなのはたんとあるまいね」
と平次。
「武家方の乗馬にはありますが、飛脚馬には勿体ないくらいの鹿毛ですよ。千両箱が三つというとせいぜい十五六貫ですが、この暑い盛りに、三里の道を水も呑ませずに行くんだから、これくらいのでなきゃあ安心がなりません。――ドウ、ドウ、二本松生れの五歳の牡で、ドウ、ドウ」