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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十五)茶碗割り(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,804 字 · 225 頁

青空文庫

「えッ、あんなに言っておいたのに、何だって帰ったんだろう」

八五郎ははなはだ拍子抜けの気味でした。

「だって松さんの倅の――丑松とか言ったね。――あの子が迎えに来たんだよ」

「仕様がないなア」

「松五郎の家というのは遠くはあるまい。行ってみようか、八」

平次は気軽にそう言ってくれます。

そこから、松五郎の家までは、ほんの五六丁。

が、二人は行き着く前に、大変な事件に出っくわしていたのです。

「何だえ、八、あの人だかりは?」

柳原土手、提灯の行き交う中へ、平次とガラッ八は顔を持って行きました。

「あ、大変ッ、松さんが」

それは思いも寄らぬ事でした。植木屋の松五郎は後ろから胸のあたりを一と突きにされて、土手の上にこと切れ、血だらけの死骸に取縋って、十三になる倅の丑松は泣いているではありませんか。

「どうした、丑松」

それを抱き起すように、八五郎。

「わーん、ちゃんが、ちゃんが、親分」

小倅はもう他愛もありません。

いろいろなだめて訊くと、八五郎の叔母の家から父親とつれ立って、ここまでやって来ると、いきなり後ろから追い抜いた男が、父親――松五郎の背中から脇差を突っ立て、はッと思う間もなく逃げ去ったというのです。