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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十五)茶碗割り(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,804 字 · 225 頁

青空文庫

銭形平次捕物控

一

一

「八、どこの帰りだ。朝っぱらから、たいそう遠走りした様子じゃないか」

銭形の平次はこんな調子でガラッ八の八五郎を迎えました。

「わかりますかえ親分、向柳原の叔母の家から来たのじゃないってことが」

八五郎の鼻はキナ臭く蠢きます。

「まだ巳刻(十時)前だよ、良い兄さんが髷節に埃を付けて歩く時刻じゃないよ。それに気組みが大変じゃないか。叔母さんとこの味噌汁や煮豆じゃ、そんな弾みがつくわけはねえ」

「まるで広小路に陣を布いている八卦屋だね」

「それとも千住か板橋から馬でも曳いて来たのか」

「冗談じゃありませんよ、親分。二年前に死んだ人間が人を殺したんだ。小石川の陸尺町から一足飛びに飛んで来ましたぜ」

「二年前に死んだ人間が人を殺した?」

「その上まだまだ四五人は殺してやるというんだから大変で――」

「誰がそんな事を言うんだ?」

「二年前に殺された人間ですよ」

「さア解らねえ、まア落着いて話せ」

「落着いて聴いて下さいよ親分、こいつは前代未聞だ」

ガラッ八の持って来た話は、あまりにも桁外れでした。二年前に死んだ人間が、予告して人を殺すということは、絶対にあり得べからざることですが、ガラッ八は自分の眼で、現にそのあり得べからざる事件を見て来たというのです。