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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十五)茶碗割り(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,804 字 · 225 頁

青空文庫

二

百両の金は、どこにも見当らなかったのです。

「主人を怨む者はなかったのか」

平次は、こんな平凡なことを訊ねました。

「慈悲深い、よく出来た御主人でございました。怨む者があるはずもございません」

「昨夜から見えないという下男は?」

「権八といって、二十九になる男でございます。下総の古河の者で、十年前から奉公し、まことに実直に勤めておりました。主人を害めるような、そんな男ではございません」

「その権八の荷物はどうした」

「それも三輪の親分さんがお調べになりましたが、――着換え一枚だけ持ち出したようで」

そういわれると、この下手人は、権八に間違いはないようです。

「権八の在所へは?」

「三輪の親分さんが追っ手を出しました」

それではもう、平次にしなければならぬ仕事は一つもありません。

二

念のため、二人の姪に会ってみました。一人はお杉といって二十五、これは総兵衛の妹の娘で、容貌も十人並、少し三白眼で、身体は頑丈ですが、何の特色もない女、下女同様にこき使われて自分もそれに満足しきっている様子です。

「縁側の雨戸が一枚開いているんでびっくりしましたよ。もしやと思って覗いてみると伯父さんが――」