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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十五)茶碗割り(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,804 字 · 225 頁

青空文庫

つづく銭形の平次。

「これだ、八五郎親分」

「あッ」

一と間の敷居際に八五郎は思わず立ち縮みました。若旦那の兵太郎は床の上に寝たまま、匕首か何かで喉をえぐられ、朱に染んで死んでいたのです。

死骸の枕元に主人の守随彦太郎が打ち萎れて坐り、その裾には娘のお輝が、身も浮くばかりに泣き崩れているのでした。

「あっしは神田の平次でございますが、この度はとんだことで」

銭形の平次が挨拶すると、主人の彦太郎は夢から覚めたように顔を挙げました。

「銭形の親分か、ちょうどよいところだ。いったい何がどうしてこんな事になったのか調べてくれ、私には少しも解らない」

秤座役人は苗字帯刀を許され、僅少ながら幕府の手当を受け、相当の見識も持っておりますが、こうなると町方の御用聞に縋る外はありません。

「ところで、何か紛失物はございませんか」

平次は思いも寄らぬ事を訊くのです。

「なんにもない。よしんば少しばかりの紛失物があったにしても、それより倅を殺した下手人を挙げるのが先じゃあるまいか、親分」

主人の彦太郎の顔には、不満らしい色が浮びます。虐たらしい死骸を前にして、平次の見当違いがもどかしかったのでしょう。