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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十五)茶碗割り(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,804 字 · 225 頁
「これは親分様方」
周吉はあわてて引っかけたらしい半纏の前を合せながら、すっかりオドオドしております。後ろから行灯を持って来たのは、まださすがに昼のままの、身だしなみを崩さないお芳。十九というにしては少しふけて、賢そうな浅黒い顔、キリリとした眼鼻立ちは決して美しくはありませんが、何かしら一度見た者の記憶に焼きつく特徴を持っております。
「染吉が殺されたんだが、知っているだろうな」
平次は短兵急でした。
「あの騒ぎですもの、よく知っておりますよ。でも、年寄りと若い女の見るようなものじゃありませんから、お芳も外へは出しません」
周吉の調子には、年寄りらしい用心深さがあります。
「染吉は今晩お芳と逢う約束だったそうだな」
「そんな事が親分――」
あわてて弁解する父親の袖をそっと引いて、
「父さん、みんな申上げた方がいいでしょう、――染吉さんは久し振りで逢って話したいことがあるから、父さんには内証で、私に酉刻半(七時)頃お稲荷様まで来るようにと、酒屋の小僧さんに頼んで伝言をよこしました」
お芳の顔はさすがに緊張して蒼くなります。
「行ったのか」
「ハイ、父さんの御機嫌がむずかしくて、家を出られないんで、少し遅れて行ってみると」