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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十)金色の処女
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十)金色の処女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 137,868 字 · 278 頁
「どこに持出したのでしょう」
「捜して下さい」
それから半刻ばかり、寺の内外をのこる隈なく捜しましたが解りません。曲者はそれを冷やかに見て、一句も言わず、折があらば逃げ出そうとしている様子、平次は少しも目が離せなかったのです。
「とにかく、寺内にあるに違いない。気長に捜したら出て来るだろう」
平次は諦めて寺を立出でました。縄付を追って、門前まで来ると、花屋には灯が点いて、店番の老爺が、褞袍を着て頬冠りをしたまま、つくねんと坐っているのですが、その恰好が一刻ばかり前に、平次がやって来たときと寸毫の変りもありません。生きた人間が、そんなに長い間、寸毫も形を崩さずに、生温かい秋の夜を、褞袍を着ていられるものでしょうか。
「あの老爺だ」
平次が指さすと、二三人の人が飛付くと一緒でした。頬冠りを取り、褞袍を剥ぐと、中から現われたのは、鑿の香も尊く、慈眼を垂れた大師の尊像ではありませんか。
「老爺をどこへやった」
続く不安はそれでした。
「物置の中で本当に眠っているよ」
曲者は始めて口を開きました。
「それから、もう一つ、その御本尊の胎内を見て下さい」
平次はたったそれだけの事を言って、曲者を追っ立てて牛込見附へ急ぎました。