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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十)金色の処女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十)金色の処女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 137,868 字 · 278 頁

青空文庫

七

「なんという馬鹿なことをするんだ。御府内の火付けは、火焙りだぞ」

平次はそれを闇の中に迎えて叱咤します。

「相すみません」

相手の素姓も判りませんが、貫兵衛は威圧されて、思わず大地に崩れました。

「幸い誰も気が付かない様子だ、――酒へ毒を入れたり、物置へ火をつけたり、一体これはどうした事だ」

「…………」

「俺は神田の平次だ、話してみちゃどうだ」

平次の声は威圧から哀憐に変っておりました。

「銭形の親分――良い方に見付かりました。みんな申上げます。この私が、今晩死ななければならないわけ――」

七

物置の前から奥の一と間に案内されて、平次とガラッ八は、磯屋貫兵衛の不思議な懺悔話に耳を傾けました。

「聴いて下さい、親分、この世の中に、私ほど幸せに生れて、私ほど不幸せになった者があるでしょうか」

磯屋貫兵衛の話はこうでした。

貫兵衛が父の跡を継いだのは十年前、ちょうど二十五の歳、金持のお坊っちゃんに育って、阿諛と諂佞に取巻かれ、人を見下してばかりきた貫兵衛は、自分の世帯になって、世の中に正面から打つかった時、初めて、自分の才能、容貌、魅力――等に対する、恐ろしい幻滅を感じさせられたのです。