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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十)金色の処女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十)金色の処女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 137,868 字 · 278 頁

青空文庫

二

お秋のたき美しさをガラッ八は知りすぎているだけに、この頼みを蹴飛ばしかねました。

「よし、それじゃ行ってやろう」

「有難うございます、八五郎親分」

「その代り、俺は店の中へは入らないよ。外に居て、十手をチラチラさせるだけだよ」

ガラッ八は馬鹿馬鹿しくも念を押します。

二

ガラッ八とお篠が、湯島の山名屋へ行ったのはその晩の戌刻(八時)過ぎでした。途中で一パイ引っ掛けて、いい機嫌になったガラッ八は、その晩の冒険に対して、何かこう、芝居じみた興味をさえ感じていたのです。

遅い商売の酒屋の店も、大戸を下ろそうというとき、

「ちょいと待ちな、主人に用事があるんだ、俺じゃねえ、あの女だがネ――」

敷居際に立ちはだかった八五郎は、片手弥蔵を懐へ落して、時々十手をチラリチラリと見せるのでした。

「ヘエー」

相手が悪いと思ったか、手代の一人はあわてて奥へ飛込みましたが、やがて戻って来ると、

「主人は離屋におります、どうぞ木戸から庭へ廻って下さい」

木戸をあけて丁寧に案内するのです。

「お篠、行って来るがいい、俺はここで待っている」

「…………」

お篠はそれに感謝の眼で応えて、手代と二人、木戸の中の闇にスーッと消えました。