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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十)金色の処女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十)金色の処女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 137,868 字 · 278 頁

青空文庫

「お嬢さんが、――お嬢さんが」

「娘がどうした」

一番先に駆け込んだのは、春日藤左衛門、それに一色友衛が続き、鳩谷小八郎が続きました。

「あッ」

凄まじい恐怖が、花火のように炸裂したのも無理はありません。部屋の中に若い娘が一人、首に強靭な麻縄を巻かれ、その縄尻を二間ばかり畳から縁側に引いて、俯向きになったまま死んでいたのです。

「お、あやめッ」

が、引起した藤左衛門は、一と目、それは妹のあやめでないことに気が付きました。

「あ、百合だ」

「お姉さん、まア」

妹のあやめは涙声になって、姉の死骸に縋りつきました。

無残な姿になっているのは、少し足が悪い上、ひどい疱瘡で見る影もないきりょうになった姉娘のお百合、二十四になるまで両親の側にいて、芸事に精を出している、日蔭の花のような娘でした。

十九になる妹のあやめは、姉に比べるとびっくりするほどの綺麗さ、その方は幸いに無事だったのです。

「まア、どうしたことでしょう」

母の玉江は、一番遅れて縁側へ顔を出しました。十九の時あやめを生んで、今年は三十七、継子のお百合よりは、遥かに美しく、若々しくさえ見える内儀ぶりです。

それから際限もなく混乱が続きました。