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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十)金色の処女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十)金色の処女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 137,868 字 · 278 頁

青空文庫

「親分さん」

「まずそれから聴こうじゃないか、伝吉」

三輪の万七は機会を掴んでグイグイと突っ込むのです。

「何でもありゃしません」

「何でもなきゃ引っ込んでいるがいい。さア、娘、――おみおとか言ったね、俺は三輪の万七だ、お前の訊ねる周助は、昨夜人手に掛ってこの有様だ。下手人はまだ解らねえ、が、殺した出刃は、その伝吉の家から持出した品だ、――ちょいと、その血染めの庖丁を取ってくれ」

三輪の万七は、血にひたったまま、畳の上に転がっている出刃庖丁を指すのでした。

「…………」

正気を取戻した娘は、あわてて顔を覆いました。首を振ると、つまみ細工の簪が、短冊形の小さい銀板をキラキラと光らせます。

「親分、そいつは可哀想だ。庖丁が入要なら、あっしが取って上げますよ」

伝吉は膝で畳の上を這い寄ると、血染めの庖丁に手をかけるのでした。

「止さないか、伝吉」

「ヘエ――」

「誰がお前に取れと言った。鮪や鰹を切りつけているお前に、血染めの庖丁を持たせたって面白くも何ともあるものか」

「ヘエ――」

万七の調子はどこまで冷酷だか解りません。良い男の伝吉は、それを聞くとさすがにムッとした様子でしたが、思い直して庖丁を畳の上に置きました。