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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十)金色の処女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十)金色の処女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 137,868 字 · 278 頁

青空文庫

「そいつを稽古しておいたら、晦日に借金取りが来たときなんか、恐ろしく調法だろうね、親分」

「馬鹿な事を言やがれ」

無駄を言いながら二人は市ヶ谷左内坂に向いました。

ある秋の日の夕景、山の手の街は、もう赤蜻蛉がスイスイと頭の上を飛ぶ時分のことです。

成瀬九十郎の道場は――いや、道場と名のつくようなものではありませんが、表に出した真新しい看板の「霞流忍術指南」の六文字だけが目立つ程度の、至って貧弱なしもたやでした。

「御免」

声のでっかいガラッ八が、精一杯の威儀を作って訪うと、町内中の新漬の味に響くようなダミ声で、ドーレと来るべきはずの段取りを、どう間違えたか、

「ハイ」

優しい声がして、格子と中の障子を、たしなみ深く開けたのは、十八九の淋しい娘です。

神田の次平、五郎八と名乗って、忍術執心のことを申入れると、

「しばらくお待ちを」

娘は一たん奥へ引込みましたが、やがて改めて二人を案内します。

「神田の次平、五郎八というのか。本来ならば町人に忍術は無用のものだが、まだ一人も弟子がつかないから、大負けに負けて門弟にしてやる。さア、ズーッとこっちへ通るがよい」

おそろしく口の達者な四十男が、畳を剥いで、床板だけ敷き直した十畳敷ほどの道場に二人を通しました。