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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十)金色の処女

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十)金色の処女(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 137,868 字 · 278 頁

青空文庫

「しばらく考えさせて下さい」

さすがの平次も、そうでも言って引下がる外はなかったのです。

相手が山脇玄内だとすると、これは容易ならぬ事になります。物を考えるともなく、平次の足癖は、そこからあまり遠くない、左内坂の成瀬九十郎のところを訪ねました。

「これは、次平ではないか、今日は稽古日ではないようだが」

成瀬九十郎は少し腑に落ち兼ねた顔です。

「この辺を通ったついでと申しちゃ失礼ですが、ちょっとお邪魔をいたしました」

「邪魔どころか、退屈で困っている。ゆるゆると話して行くがいい、――ところで大層顔色がよくないようだが、何か心配事でもあるのかな」

「心配事なんかございません、――尾張様のお屋敷へ泥棒が入ったそうで、世の中には恐ろしい奴があるものだと、感心をしていたところでございます」

「別に感心するほどの事ではないではないか」

成瀬九十郎は自若としておりますが、充分に好奇心を動かしている様子です。

「あれほどのお屋敷には厳重な見張り見廻りもあります。表裏の門は門鑑がなければ、ちょっとも通すことではありません」

「待て待て次平、――お前は成瀬九十郎の弟子になって、忍術の手ほどきぐらいは習ったはずだ。