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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁

青空文庫

そう言われると一句もありません。

「お浜さんが――」

ガラッ八はまだ腑に落ちないものがある様子ですが、

「お浜さんが一応疑われるわけさ、が、正面から咽喉笛へ突き立てた出刃が、後ろへ突き抜けるほど深く刺してあるんだぜ、全く恐ろしい力だ。誰が見たって、女や子供の手際とは思わないよ、――まさか、咽喉笛へ出刃を当てさしてよ、槌で叩かせる者もあるめえ」

「なるほどね」

仙太の話を聞くと、お浜には少しの疑いも掛けていません。

「それに、正面からあれだけの事をやって、返り血を浴びないはずはない、――お浜の着物は残らず見たが、汚点一つないよ」

最後の止めを刺されながら、ガラッ八は離屋に向いました。納戸の前から、土蔵の前を通って、三尺の廊下の尽きるところに、離屋の二階の登り口が開きます。

上には親類の年寄りが二三人と、嫁のお清が、まだ入棺も済まぬ死骸の前に、湿っぽく坐って引っ切りなしに線香を上げているのでした。

「御骨折で――有難う存じます」

お清はふり返ってガラッ八に挨拶しました。二十歳と言うにしては少しふけておりますが、抜群のきりょうで、身体のひ弱さと反対に、気性はすぐれているらしく、この騒ぎの中にも、一番取乱した様子はありません。