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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁

青空文庫

ヘエ、父子二代の忠義者で――」

「主人の勘五郎は?」

「孝行者ですよ、親分さん。あんな結構な聟は滅多にあるものじゃございません」

「すると、隠居を怨んでいる者は一人もないばかりでなく、家中の者は皆んな忠義者で孝行者ばかりのようだが」

「へッ、へッ、へッ、まア、そういったようなわけで、へッへッ」

何という厭な幇間でしょう。平次は嘔き気を催すような心持で、眼顔で向うへ追いやりました。

「万吉も呼んで来ましょうか、親分」

平次がうなずくと、ガラッ八は要領よく万吉をつれて来ました。二十五というにしては、少し老成に見えますが、まず申分のない男で、態度も何となく落着いた、好感を持たせる肌合の人間です。

「お染との祝言が延びるだろうな、この騒ぎじゃ」

いきなり、平次はこんな事を言うのでした。

「いえ」

万吉はどちらともつかない事を言いますが、気のせいか、ちょっと表情が堅くなりました。

「どこまで話が進んでいるんだい」

「何にも決ったわけじゃございません。それに――」

万吉は唇を噛みました。

「それに?」

「私は奉公人でございますから、――身を引くのが本当かとそんな事も考えております」