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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁

青空文庫

四

つなはその顔を冷やかに、黙ったまま見返した。

四

つなは黙っていた。

かよがなぜ此処へ現われたか、彼女にはもちろんわからない。かよは約ひと月まえに甲野の家を出た。それからどこへいったか、今なにをしているか、まるで知らなかった。

けれども、本能的に、かよが自分の味方でないということは直感できた。

「あら、せっかくあたしが来てあげたのに、あなたは少しも嬉しそうにして下さらないのね」

かよは手燭を下に置き、そこへ跼んで、わざと甘えたつくり声で云った。彼女が跼むと、嬌めかしい香料の匂いが強くした。

「なんのためにいらしったの」

つなが冷やかに訊いた。

「なんのためでしょう、おわかりにならないかしら」

「わからないわ、もちろん知りたくもないけれど」

「あらそうかしら、――」

かよは喉で笑った。つなはその笑いが大嫌いであった。長いことかよといっしょに生活してきたけれど、かよの色っぽい身ごなしや、舌ったるい言葉つきや、鳩のような喉声の笑い方を聞くと、いつもぞっとするほどいやらしかった。

「そんなことはない筈よ」

かよは悠くりと云った。

「十三の年からごいっしょに暮した、かよが来たんですもの、あなたは嬉しさに躍りあがる筈だし、もっと歓迎なさらなくちゃならない筈だわ、そうして、どうか助けて呉れと仰しゃる筈じゃないの」