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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁
小降りになった雨の中を、半丁ばかり走ってゆくと、駕籠の提灯が見えた。そこで走っている足をゆるめたがゆるめるのと同時に、うしろからいきなりだっと突きとばされた。
――しまった。
万三郎は激しくのめって、水溜りの中へ転倒した。偶然ではない、誰かうしろから追って来て突きとばしたのである。駕籠のあとを守っていた人間があって、跟けると思ったのが逆に跟けられたのだ。
――やられるぞ。
彼はそう直感し、転倒したまま、地面の上で躯を三転した。すばやく転げて、抜打ちに備えようとすると、
「無礼者め」
と喚く声がした。見ると侍が一人、ぬっとそこに立って、闇の中からこちらを睨んでいた。
「こんな暗がりをむやみに走るやつがあるか、気をつけろばか者」
万三郎は黙っていた。
「本来なら一刀両断というところだが、今夜は気持よく酔っているから勘弁してやる、有難く思ってさっさと帰れ、――ういっ、人間の命は大切なもんだ。大事にしろよ、ばか者」
こう罵りながらひょろひょろした足どりで、駕籠のいったほうへ去っていった。万三郎は道の上に片手をついたまま、そのうしろ姿をじっと見まもっていた。
紅雀