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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁

青空文庫

三

三

山ぐには日の昏れるのが早い。

残照がいっとき明るく部屋にながれ込んだと思うと、いつかしら、盃を持つ手許がたそがれて来た。

「これはいけない、合い部屋になりそうですよ」

飲みながら街道を眺めていた兵馬が、そう云って渋い顔をした。

「合い部屋ですって」

「入れこみですよ、つまりこの部屋へほかの客もいっしょに泊るというわけです」

「すると銭湯のようなものですな」

こう云いながら、万三郎も覗いてみた。

この笹屋の前にも、四頭ばかりの荷駄が停り、人足や旅装の侍たちが右往左往していた。どこかの大名でも着いたのであろうか、――それにしては、鳥沢か大月に泊る筈である。猿橋は間の宿で、大名の泊るような設備はないようにみえるが、万三郎がそう思っていると、まもなく女中が灯をいれた行燈を持って来て、兵馬の予言どおり合い宿を申し込んだ。

「済みませんけど、急に大勢さんのお客が着きましたでどうかお頼み申します」

と女中は恐縮そうに云った。

「なにしろ二十何人という人数ですで、旅籠ぜんぶに割振ってようやくっていうわけでございますから」

「大名でも着いたのかい」

兵馬が訊いた。

「いいえ、お大名じゃございません、お侍衆だけでございます」