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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《風流太平記(ふうりゅうたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 頁

青空文庫

要害山

一

要害山

一

日が昏れかかっていた。

甲府の城下町まで一里何町という、坂折村のはずれを一挺の駕籠が右へ折れた。

そこは田に挾まれた村道で、向うに古い神社の森があり、周囲は青々と麦の伸びた畑や、林や、土を耡き返した田などが続き、遠く土を打っている農夫の姿が、二三見えるほかには、家らしいものも眼につかなかった。

駕籠かき人足は、けいきのいい掛け声をあげながら、神社の境内へ入ってゆき、古びた小さな社殿のうしろへまわって、そこへ駕籠をおろした。

「やれやれ、骨を折ったぞ」

「百里もとばした馬のようだぜ、あにい、この汗を見てくれ」

「まず一服とするか」

二人は草の上へどっかと、腰をおろした。

片方は三十がらみ、片方は二十六七であろう。どちらも人相のよくない男である、三十がらみの人足は髭だらけの頬に大きな傷痕があり、そこだけ髭を剃ったようにみえる。若いほうは動物的な、魯鈍と狡猾の混りあった肉の厚い無表情な顔で、鼻がぺしゃんと潰れていた。

年上のほうが莨入と燧袋を出し、なたまめきせるでゆうゆうと一服つけた。

「なん年稼いでも下り坂の駕籠は骨が折れていけねえ」

「おらあ腰の骨が外れそうだぜ」