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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁
誰かが、そう叫ぶ。
三度目の鬨の声をあげて、番所のほうへ追いかけてゆくと、武蔵は、もうその正面の木戸から中へ、躍りこんでいた。
そこは、檻だ、死地である。――しかし武蔵の眼には、厳めしく並んでいる武器も、柵も、役人も見えなかった。
「あッ、何者だ」
と、組みついてきた目付役人を、たッた一拳のもとに仆してしまったのも、彼自身は意識しない。
中木戸の柱を、揺りうごかし、それを引き抜いて振りまわした。相手の頭数など問題でない。ただ真っ黒に集合してかかって来るものが相手だった。それを、ただおよその見当で撲りつけると、無数の槍と太刀が、折れては宙に飛び、また地へ捨てられた。
「姉上っ――」
裏へ廻る。
「姉者人!」
と、そこらの建物を血ばしった眼で覗いてゆく。
「――武蔵じゃ、姉者人ッ」
閉まっている戸は、引っ抱えている五寸角の柱で、軒ごとに突き破った。番人の飼っている鶏が、けたたましく絶叫して、役宅の屋根へ飛び上がって、天変地変でも来たように啼きぬいている。
「姉者人ッ――」
彼の声は、鶏のようにシャ嗄れてしまった。お吟は、どこにも見えないのだった。姉をよぶ声が次第に絶望的になってきた。