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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(一)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 頁

青空文庫

やっと、年は十か十一。

雨に光っている髪の毛は、蓬々と耳にかぶさって、絵に描いた河っ童そのままだ。筒袖の腰きりに、縄の帯、背中まで泥濘の跳ねを上げている。

「城か」

奥で木賃の親爺がいう。

「あ、おらだ」

「きょうはの、まだ、お客様が帰えらねえだから、酒はいらぬよ」

「でも、帰えれば要るんだろう。いつもだけ持ッて来とこうや」

「お客様が飲がるといったら、わしが取りにゆくからいい」

「……爺さん、そこで、何しているんだい」

「あした鞍馬へのぼる荷駄へ、手紙を頼もうと思って、書き始めたが、一字一字、文字が思い出せねえで肩を凝らしているところじゃ、うるさいから、口をきいてくれるな」

「ちぇッ、腰が曲りかけているくせに、まだ字を覚えねえのか」

「このチビが、また小賢しいこといいさらして、薪でも食らうな」

「おらが、書いてやるよ」

「ばか吐かせ」

「ほんとだッてば! アハハハハそんな芋という字があるものか、それじゃ竿だよ」

「やかましいッ」

「やかましくッても、見ちゃいられねえもの。爺さん、鞍馬の知人へ、竿を届けるのかい」

「芋を届けるのだ」

「じゃ、強情を張らないで、芋と書いたらいいじゃないか」